揖夜神社(いやじんじゃ)は島根県松江市東出雲町揖屋 (いや)に鎮座する神社です。
創建についての詳細は不明ですが、【日本書紀】には「言屋社」、【出雲国風土記】には「伊布夜社」、【延喜式神名帳】には「揖屋神社」と記載されていることから、奈良時代には存在していたと思われます。
ご祭神はイザナミノミコトで揖夜神社の東方の東出雲町揖屋平賀には、日本神話でイザナギがイザナミを迎えに行ったとされる黄泉の国の候補地、黄泉平良坂(よもつひらさか)があることから、黄泉の国に縁の深い古社とされています。
黄泉比良坂とは日本神話に登場する場所で、神話では「伊邪那美尊(いざなみのみこと)の死をきっかけに、伊邪那岐尊(いざなぎのみこと)は「生者の国」、伊邪那美尊は「死者の国」とそれぞれの道を歩むことになります。
伊邪那岐尊は、亡くなった妻の伊邪那美尊に逢おうと黄泉国に向かったのですが、死者となって変わり果てた伊邪那美尊の姿を見て恐怖から逃げ帰ってしまった。
これに怒った伊邪那美尊は追手と共に追いかけたが、伊邪那岐尊は黄泉比良坂に巨大な岩(千引岩)を置いて黄泉国への道を塞いだ」と伝えられています。
このことから、黄泉比良坂は あの世とこの世を結ぶ場所だと言われています。
戦国時代には大内氏・尼子氏・毛利氏、江戸時代には堀尾氏・京極氏・松平氏などが崇敬し、それぞれ戦勝を祈念して寄進や社殿の修復などを行っています。江戸時代までは「揖屋大社」「揖屋大明神」と称されていましたが、明治になって「揖夜神社」と改称されました。
出雲の中でも重要とされている6つの神社、意宇六社(おうろくしゃ)の一つでもあり、6社を順番に回っていく「六社参り」が有名です。
※意宇六社とは「熊野大社・八重垣神社・神魂神社・揖夜神社・眞名井神社・六所神社」
- 神社名:揖夜神社(いやじんじゃ)
- ご祭神:伊弉冉命
- ご利益:国家安泰、子孫繁栄、家内安全、商売繁盛、五穀豊穣、病気平癒、厄難退除
- 旧社格:式内社・県社
- 本殿の様式:大社造
- 祭日:御田打祭 1月3日、御田植祭 5月28日、穂掛祭 8月28日、例祭 10月19日
- 住所:島根県松江市東出雲町揖屋2229(Googleマップ)
- 営業時間:境内自由
- 駐車場:無料駐車場あり(10台)
- アクセス:JR揖屋駅から徒歩10分
揖夜神社では、毎年8月28日に『穂掛祭』(ほかけまつり)及び『一ツ石神幸祭』(しんこうさい)という神事が行われています。
穂掛祭前日の27日に神職たちは揖屋神社の北に位置する中海の袖師ヶ浦(そでしがうら)で禊(みそぎ)を行います。そして、社務所にて新米で作った御神酒、煎りあげた玄米(焼米)などの神饌(しんせん)を用意します。
祭り当日の28日早朝、その年に実った稲穂を榊(さかき)に取り付けた穂掛榊(ほかけさかき)を境内の75か所に捧げ、用意した神饌をお供えし、田の神に豊作を感謝する神事です。
そしてその後に一ツ石神幸祭が行われます。御神輿を西揖屋海岸から御座船(神船)へ移し、袖師ヶ浦の沖にある神石の「一ツ石」までお運びします。そして、一ツ石に稲穂と甘酒を捧げ、豊作豊漁祈念・海上安全を祈願します。
祈願の神事が終わると御座船(神船)は西揖屋に戻り、御神輿は御座船(神船)から屋台車へと移され、揖屋神社まで還幸(かんこう)行列が行われます。御神輿が先頭となり各町内の笛太鼓の囃子方(はやしかた)を乗せた屋台車を中心に、鈴成提灯をかざし行列となって町内を練り歩きます。沿道にはたくさんの露店があり大勢の人でにぎわいます。
かつては、田の神に感謝する「穂掛祭」と豊漁祈願の「一ツ石神幸祭」は別の祭事でしたが、いつのころからか一緒に行われるようになったそうです。
この世と黄泉の国をつなぐ黄泉平良坂
黄泉比良坂には、注連柱や賽銭箱が配置された神社のようになっており、周辺には神話を彷彿とさせる巨石や桃の木などが見られます。
揖夜神社から黄泉比良坂までは車で3分ほどの場所にあります。
松江に鎮座する古社(鳥居&燈籠)
鳥居をくぐると、お尻を持ち上げている姿勢の出雲構え獅子が迎えてくれます。 そして注連柱があり、注連柱の先には神門があります。
神社やお寺の境内には燈籠や石碑・手水鉢・大香炉などがあります。これらの重い石造物の台座や脚として、動物・力士・鬼・唐人(唐子)などが、背に載せたり担(かつ)いだりしているのを見かけます。
参道の鳥居の両脇には、灯籠を載せた亀趺(きふ)のような石碑があります。亀趺とは台石の一種で、石碑を載せる台座が大亀の形をした石碑です。この亀のような生き物は贔屓(ひいき)といい、中国の伝説上の生物です。龍が生んだ9頭の神獣・竜生九子(りゅうせいきゅうし)の一子で、巨大な亀の形に似た想像上の霊獣だとされています。
江戸時代に日本でも取り入れられたようで、島根県の神社に散見できます。
随身像と狛犬がお祀りされた随身門
随身門の両サイドには随身像と狛犬が祀られています。随身像は向い合って座っており、島根では向い合って座る随身門が多いようです。参道は横参道となっております。
内部が出雲大社と逆向きになっている本殿
出雲地方に特有の大きな注連縄が印象的です。
拝殿は神楽殿を兼ねているのか壁がなく柱のみで開放的ですね。
中央には丸い鏡が置かれ、神が坐ますことを感じます。
本殿は最も古い建築様式とされる大社造りで、ご祭神が女神であるため千木が内削ぎとなっています。
また内部構造は御神座が本殿の左奥にあって、御神体は右方向を向いて鎮座しています。これは男神を祀る出雲大社とは左右反対の造りとなっています。扉には五色の八雲、極彩色の神事の障壁画(県文化財)が描かれているそうです。
神紋は出雲大社と同じ「二重亀甲に剣花菱」ということからも、揖夜神社は古くから出雲国造家と関係が深い由緒ある社であることがうかがえます。
- 主祭神
伊弉冉命(いざなみのみこと) - 配祀神
大己貴命(おおなむちのみこと)
少彦名命(すくなひこなのみこと)
事代主命(ことしろぬしのみこと)
武御名方命(たけみなかたのみこと)
経津主命(ふつぬしのみこと)
本殿の両サイドに鎮座する境内社
本殿の両脇には「韓国伊太氐神社」「三穂津姫神社」が祀られおり、拝殿脇から両社と本殿裏をぐるっと通り抜けることができる。
樹齢600年の御神木「椎の木」
御神木の椎の木は樹齢600年です。
お守り・おみくじ・御朱印(授与所)
揖夜神社の境内社(摂社・末社)
藁で作った龍蛇が奉納され、その前には小さな御幣がたくさん立てられています。この藁蛇は大蛇神(チイナマイト)といわれており、揖夜神社には3体おられます。 ここ出雲地方では荒神(こうじん)を祀った樹木に藁蛇を巻きつけたり石などに藁蛇を供え、その周囲や藁蛇に幣束を刺すような形態で伝承されており、農耕の神、あるいは牛馬の神として信仰されています。 そのお祭り荒神祭は、その年の農作物の収穫を感謝する行事で、毎年収穫後の11月から12月を中心に行われています。
島根県東部の出雲地方では荒神祭、鳥取県西部の伯耆(ほうき)地方では申し上げ(もうしあげ)、竜巻さんなどと呼ばれています。なかには藁蛇を引きずり回したり、子供が藁蛇を隠したり、翌年の豊凶を占ったりといった行事を伴う事例もあり、かつては出雲地方で広く行われていましたが、今日では中断したり規模を縮小して行われているようです。
揖夜神社のアクセス
- 神社名:揖夜神社(いやじんじゃ)
- 住所:島根県松江市東出雲町揖屋2229(Googleマップ)
- 営業時間:境内自由
- 駐車場:無料駐車場あり(10台)
- アクセス:JR揖屋駅から徒歩10分
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